127 商号登記との違い

 商号も登記によって、法的に有効な意味を持つのですが、これまで説明した商標登録との違いを、効果の面と法律の面から見ておきます。

(1)効果についての違い
 他人や他社が自分の商号や商標を使用することを排除できるか、という効果については、商号登記の場合は、同一住所・同一商号の場合のみ排除できます。
 他方、商標登録の場合は、商標権は日本全国・同一類似の商標にも及んで排除することができます。
 従って、商号を登記しても他人・他社の使用を排除する効力はほとんどない、といえます。どんなに偶然が重なっても、同一住所で本店を構える可能性はまず考えられないですから、実質的には排除できないに等しいといえます。

 「商号登記をすれば商標登録は必要ないのですか?」という質問をよく頂きますが、商号登記をしても他人の使用を排除することはできません。
 また、先に商号登記していても、他人が後から商標登録してしまうと、その名前が使えなくなることもあります。

 何故このような効果の違いがあるかと、法律についての説明を以下に解説していきます。

(2)法律についての違い
 「商号」とは、いくつかの国語辞書を見ると、「商人が営業上自己を表示するために用いる名称」と解説されています。会社であれば、いわゆる社名ということになります。社名(商号)そのもの、又は略称社名(商号)そのものを商標登録する会社もあり、商標登録することは他人に使わせないために非常に重要であることは、これまでの説明のとおりです。

 商号とその登記については、商法、商業登記法及び会社法他で決められていますので、以下その順に見ていきます。
「商人(会社及び外国会社を除く。)は、その氏、氏名その他の名称をもってその商号とすることができる。 」(商法第11条1項 商号の選定)
「商人は、その商号の登記をすることができる。」(商法第11条2項 商号の選定)
「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」(商法第12条第1項 他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)
【説明】法律上の商号は、この商法で定義されています。どんな名称を商号とするかは、誤認されない条件で基本的には自由です。商号選択を自由とする商号自由主義が採用されています。また、商人は登記をすることができるということだけで、法務局に登記しなければならないわけではありません。

「商号の登記は、その商号が他人の既に登記した商号と同一であり、かつ、その営業所(会社にあっては、本店。)の所在場所が当該他人の商号の登記に係る営業所の所在場所と同一であるときは、することができない。」(商業登記法第27条 同一の所在場所における同一の商号の登記の禁止)
【説明】登記に際しての商号の要件は、他人が既に登記したと同一の所在場所(住所番地)でかつ同一の商号は登記できないことだけです。本店の所在地が異なれば、同じ商号が複数件登記されうるのですから、実質的にどんな名称を商号とできるかは、登記の手続の中では制限がないといえます。
平成18年5月から新会社法が施行される前は、同一市町村内で同一類似商号を排除できましたが新会社法施行で、その排除能力もなくなりました。そのため、ますます商標登録が必要になっています。

「会社は、その名称を商号とする。」(会社法第6条1項 商号)
「何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」(会社法第8条1項 会社と誤認させる名称等の使用の禁止)
「株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。」(会社法第911条1項 株式会社の設立の登記)
「1項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。@目的、A商号、B本店及び支店の所在場所、C株式会社の存続期間又は解散の事由についての定款の定めがあるときは、その定め、D資本金の額、E発行可能株式総数・・・」(会社法第911条3項 株式会社の設立の登記)
【説明】株式会社の場合、法律上の商号は、この会社法で定義されています。どんな名称を商号とするかは、誤認されない条件で基本的には自由です。また、株式会社の場合には、商号と会社設立に必要な事項を、必ず管轄の法務局に登記しなければなりません。

 このようにして、商号の登記は、会社設立の登記に際して会社の名称を商号として、登記するに過ぎず、会社を識別するために過ぎません。その名称に特別な保護を受けるようになるわけではありません。自然人の場合に、出生のときに戸籍に名前が記載されるのと同様です。
 他方、商標制度の場合には、出願した商標が保護するに値するか否かの審査を受けます。審査で登録拒絶の査定を受けなければ、登録を受けることができ、独占排他的な使用権を得て、保護を受けることができるのです。法の目的が異なることから、手続きや効果が全く異なるものといえます。