215_9 他人の商品等を表示するものとして日本国内又は

外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一

又は類似の商標で、不正の目的をもつて使用をするもの

 条文では、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。)をもつて使用をするもの(前一号から十八号に掲げるものを除く。)」(商標法第四条第一項第十九号)となっています。
【説明】著名な商標と類似する商標で、不正の目的で使用するものは出願しても、登録を受けることができません。他人の商標と混同を生じなくても(商標法第四条第一項第十五号)、登録を受けることができません。特許庁の審査基準は、次のとおりです。


1.例えば、次のような商標は、本号の規定に該当するものとする。
(イ) 外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの。
(ロ) 日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの。
2.本号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」には、最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されている商標を含むものとする。
3.本号でいう「外国における需要者の間に広く認識されている商標」は、当該国において周知なことは必要であるが、必ずしも複数の国において周知であることを要しないものとする。また、我が国における周知性も要しないものとする。
4.「不正の目的」の認定にあたっては、例えば、以下の(イ)ないし(ヘ)に示すような資料が存する場合には、当該資料を充分勘案するものとする。
(イ) その他人の商標が需要者の間に広く知られている事実(使用時期、使用
範囲、使用頻度等)を示す資料
(ロ) その周知商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであることを示す資料
(ハ) その周知商標の所有者が、我が国に進出する具体的計画(例えば、我が国への輸出、国内での販売等)を有している事実を示す資料
(ニ) その周知商標の所有者が近い将来、事業規模の拡大の計画(例えば、新規事業、新たな地域での事業の実施等)を有している事実を示す資料
(ホ) 出願人より、商標の買取り、代理店契約締結等の要求を受けている事実を示す資料
(ヘ) 出願人がその商標を使用した場合、その周知商標に化体した信用、名声、顧客吸引力等を毀損させるおそれがあることを示す資料

5.本号の適用に当たっては、@及びAの要件を満たすような商標登録出願に係る商標については、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとする。
@ 一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであること。
A その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものであること。
6.周知性の認定に当たっては、この基準第3の八(第4条第1項第10号)の7.を準用する。



「不正の目的をもって使用する」については、例えば、次の事例があります。ソフトウエア制作業者である甲社は、商標「iOffice2000」を指定商品「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路その他の電子応用機械器具」に使うものとして、出願し登録を受けました。
しかし、ソフトウエア制作業者であるA社(「Officeシリーズ商標」の使用者)は、特許庁に対して登録異議の申立をしました。これを受けて、特許庁は、審判官による審理の結果、「商標権者(甲社)は申立人(A社)使用商標が、本件商標の出願前より世界的に周知・著名であった事実を知りながら、申立人使用商標である「Office」と同一の文字をその商標中に含み、申立人使用商標と商標において類似する本件商標を出願したものであり、商標権者が本件商標を採択使用する行為には不正の目的があったものと推認せざるを得ない。」と不正目的を認定して、商標法第四条第一項第十九号に該当するので取消す決定をしました。
甲社はこれを不服として、東京高等裁判所に、特許庁を被告として、登録異議の決定を取消す訴えを起こしました。しかし、東京高等裁判所は、「原告(甲社)が販売しているグループウエアがマイクロソフト(A社)が販売しているオフィスソフトと密接な関連性を有するソフトウエアであることは前記のとおりであり、原告がマイクロソフトの著名なオフィスソフトである「Office2000」と類似する本件商標を付したグループウエアを販売することにより、他人の商標の著名性にただ乗りする意図があると認められることは、前記認定のとおりである。」として、特許庁の決定を取消す理由がないと、甲社の訴えを退けました。(東京高等裁判所平成13年(行ケ)第205号)