123 商標登録しなくても使用できる例外

 商標登録をしていないと後から使うことができなくなるなど、商標登録の必要性 をご理解いただけたと思います。 

逆に、他人の商標権の範囲(右図白抜き部分)では必ずいつも絶対に使うことができないか、という問題ですが、これにも例外があります。不正競争の目的でなく、他人の出願前から使って需要者に広く認識されれば、他人が後から商標権を得ている範囲でも侵害とならない場合があります。これを先使用権 といいます(右図の右下り斜線部)。

「需要者に広く認識される」とは、全国的に認識されている商標だけでなく、ある一地方で広く認識されている商標も該当します。
但し、需要者に広く認識されていることの証明は、広告宣伝の実施記録や証明、取引の記録や証明、公共機関の証明、アンケート調査など大変な労力を使って証明しなければなりません。他人が後から出願して得た商標権に負けない先使用権とは、このように証明する以上に労力と時間をかけて蓄積した信用でもあり、ハードルの高いものです。おいそれと認められる権利ではありません。

そしてこの先使用権は商標制度の中では例外的なものであり、次のような条件付きで主張できる弱いものです。
(1) 警告を受ける可能性がある。
(2) 警告を受けたり、訴えられたりしたら先使用権があることを立証しなくてはいけなくなる。
(3) 混同防止表示請求を受ける可能性がある。

事業が成功して、使っていた商標が需要者に広く認識されるに至ることは大変すばらしいことですが、そこに至る以前に、商標を安心して使い続けることができなければなりません。そうするためには、商標を使おうとする始めのときから、商標登録しておくに越したことはないことをご理解いただけると思います。