421 間接侵害

 通常の商標登録と防護標章登録 で、正当な権原のない他人が使用すれば、商標権の本来的な侵害(直接侵害)となる範囲が、右図の専有範囲と禁止範囲です。
 商標権は、表示されている標章(マーク等)のみを模倣することが容易であるため、工業所有権の中でも侵害を受け易く、専有範囲や禁止範囲の使用行為を侵害行為とするだけでは、商標権の保護として十分ではありません。
 そこで、本来的な侵害の直前の予備行為として、いわゆる間接侵害も、侵害とみなし、商標権者は、権利行使することができ、刑事罰も科せられます。

 どのような行為が侵害の直前の予備行為として権利行使できるのか、逆に、どのような行為をすると侵害とみなされるのか、を理解しておく必要があります。
 例えば、登録商標又は、それと類似する商標を表示する商品を、販売するために所持するだけの行為でも、侵害とみなされます。(商標法第三十七条第二号)
また、登録商標又は、それと類似する商標を表示する物(ラベル、包装紙等)を、使用するために所持するだけの行為でも、侵害とみなされます。(商標法第三十七条第五号)
更に、登録商標又は、それと類似する商標を表示する物(ラベル、包装紙等)を、使用するために製造(印刷等)する行為も、製造行為を委託した者の侵害とみなされます。(商標法第三十七条第七号)
また、登録商標又は、それと類似する商標を表示する物(ラベル、包装紙等)を、製造するためにのみ用いる物(ラベルの金型等)を製造するだけの行為でも、侵害とみなされます。(商標法第三十七条第八号)これは、七号の直前の、又予備行為といえます(特許庁編「工業所有権法逐条解説第18版」抜粋)。
防護標章の場合も、登録商標と同じ標章を指定商品や役務について使用するための、一連の予備行為が、商標法第三十七条第二号から第八号までと同様に、侵害とみなされます。(商標法第六十七条第二号から第八号)