126 不正競争防止法では商標を守れないのか
不正競争防止法第二条第一項第一号では、「他人の商品等表示(注1)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」と、
同法第二号では、「自己の商品等表示(注1)として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、・・・(一号に同じ)提供する行為」を、商品等表示の不正競争行為としています。
注1:人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。
これらの不正競争行為により、自分の営業上の利益を侵害される場合には、差し止めを請求することができ、他人の営業上の利益を侵害した者は、損害を賠償する責めを負う、としています。また、一定の場合、刑事罰も科せられることで、商品や営業の商品等表示を守ることにしています
商標法で定めている商標登録制度との大きな違いは、その名称のとおり登録を必要とするか否か、にあります。不正競争防止法では、登録することは必要ではありません。必要ではありませんが、「広く認識されて・・・混同を生じ」れば(一号)、又は「著名」であれば(二号)、守られます。このように、不正競争防止法で守られる場合が限られたものになります。
逆に商標法では、登録することが必要です。必要ですが、広く認識されない商標でも、混同を生じていない商標でも、著名でない商標でも守ることができます。登録を受けることができれば、独占排他的な強力な商標権を得ることができるのです。
さらに、実際に営業上の利益を侵害されたとして、差し止めや損害賠償を裁判所に訴える場合に立証責任は、不正競争の場合にはそのハードルが非常に高いといえます。具体的には、侵害者に不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的)があることを、訴える側が立証しなければなりません。他方、商標権の場合には、過失があったことは推定され、訴える側の立証責任は転換されています。つまり、過失が無かったことを侵害者側が立証しなくてはならないのです。商標権の存在は、商標公報で公開されているのであるから、それを知らないで(過失で)侵害に及んだと推定されるのです。商標権の強力さをご理解いただけると思います。