222 地域団体商標
地域団体商標とは、地域ブランドを適切に保護することにより、地域の特産品等に携わる事業者の信用の維持を図り、産業競争力の強化と地域経済の活性化を支援することを目的に平成18年4月1日から導入された制度です。(商標法第7条の2)
地域ブランドとして用いられることが多い地域の名称と商品等の名称等からなる文字商標について、登録要件を緩和して、一定の条件を付して、登録を受けやすくし、地域活性化を支援しようとしています。地域の名称と商品等の名称等からなる文字商標は、これまで説明してきた通常の商標の場合には、記述的商標に該当し、識別力がなく登録を受けることができませんでした。従って、登録を受けるためには、その商品・役務の需要者の間で全国的に認識されるようになるまで、事業者の信用を蓄積しなければならず、地域活性化を充分に支援することはできませんでした。
そこで、登録要件である周知性を緩和して、例えば隣接都道府県に及ぶ程度の需要者の間で認識されるようになれば、登録を受けることができる点が、通常の商標と異なります。
このような地域の名称と商品等の名称等からなる文字商標は、その地域の事業者であれば誰もが使用を欲するものです。このため、その商標を使用する団体の構成員になる資格を有しているのであれば、加入を不当に制限してはならない(加入の自由)、という一定の条件が付されています。
地域の名称と商品等の名称等からなる文字商標とは、具体的な例を下記に示します。
【例】商標「大間まぐろ」
種別:地域団体商標
登録: 第5051377号
指定商品「青森県下北半島大間沖で漁獲されるまぐろ」
権利者: 大間漁業協同組合
加入の自由とは、具体的な例を下記に示します。
【例】上の例の大間漁業協同組合は、水産業協同組合法により設立された法人であり、その25条で「組合員たる資格を有する者が組合に加入しようとするときは、組合は、正当な理由がないのに、その加入を拒み、又はその加入につき現在の組合員が加入の際に附されたよりも困難な条件を附してはならない。」と定め、加入の自由を担保しています。
ご参考までに、商標「夕張メロン」(ゴシック調字体による表示)は、この地域団体商標の制度ができる前に、出願され、通常の団体商標として、平成9年に登録を受けています。登録番号は第3334043号、権利者は夕張市農業協同組合、指定商品は「メロン」です。商標「夕張メロン」は、表面的には単に地域の名称と商品の普通名称の結合にすぎませんが、平成9年の時点で、全国的に周知され、自他商品の識別力を有していることが認められたと考えられます。
全国的に周知され識別力を獲得するに至る経緯を以下に簡単にご紹介致します。
夕張メロンの事業は、昭和36年に品種である夕張キングが作られ、生産農家が増えていきました。昭和54年から熟度の進みが早いという欠点を補う産地直送システムが導入され、全国向けに出荷が行われるようになりました。商標関係では、昭和54年に登録番号を第1379023号で、メロンの果実に貼る証明用の品質シールに商標登録を受けています。この品質シールは、メロンの果実の茎を連想させる特徴のある形状に、「夕張メロン」の文字をメロンのつる状の茎を連想させる特徴のある字体で表示したものです。
次に、平成5年に登録番号を第2591067号で、文字商標「夕張メロン」に商標登録を受けています。「夕張メロン」の文字は、メロンのつる茎を連想させる特徴のある字体で表示したものです。そして、同じ商標が全国的に周知されていることが認められて、平成9年に登録番号を第2591067(防護2)号で、防護標章
の登録を受けています。そして、同じ年に冒頭のゴシック調字体による表示の文字商標の登録を受けています。