341 外国での権利化
外国でも商品を販売したり、役務を提供しようとするときに、外国での商標の権利化が有効な手段になります。また、外国で商品や役務が模倣されることを防ぐためにも、外国で商標を権利化することによって、その外国の官庁等の公的機関により法的な保護を受けることが望まれます。
日本で商標権が保護されるのとほぼ同様な保護を、外国でも受けることができるのは、パリ条約やマドリッド協定議定書の国際条約で、加盟国同士で約束をしているからです。
では、外国での権利化や、逆に外国人による日本での権利化がどの程度行われているのか、特許庁の2009年の統計データを見てみます。
日本での商標登録出願件数は、110,841件。その中、内国人による出願は、90,474件、外国人による出願は、20,367件です。外国人が日本で積極的に事業展開しようとしていることがうかがえます。
マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願(日本から外国へ)件数は、1,310件。のべ指定国数では、6,364国(EUは全体で1国として計上)。権利化の件数は、のべ指定国数に相当しますから、日本から外国へも積極的に権利化していることがうかがえます。
マドリッド協定議定書に基づく国際商標登録出願(外国から日本へ)件数は、10,641件。外国人による出願のほぼ半分は、マドリッド協定議定書に基づく制度を利用していることがわかります。
外国での商標の権利化の手続きは、2通りの手続きがあります。一つは、パリ条約による手続きです。パリ条約の基本は、いわゆる内国民待遇ですから、例えば、パリ条約の同盟国同士であれば、日本国国民である甲氏が、米国の官庁(特許庁に相当)に商標登録出願する際に、米国国民と同じ待遇で権利化でき、保護を受けることができることになります。複数の国に、出願する場合には、それぞれの国の官庁に出願の手続きをします。(右図参照)
もう一つの手続きは、マドリッド協定議定書に基づく制度を利用する手続きです。マドリッド協定議定書の基本は、複数の国に出願する手続きを、日本の特許庁を経由して、国際事務局に対してする一つの手続きで済ますことができる、ということにあります。手続き上簡単であるだけでなく、時間的にも、費用的にも大変メリットのある手続きです。(右図参照)
パリ条約による国ごとにする出願手続きも、マドリッド協定議定書による一つにしてする出願手続きも、出願以降、その国の法律に照らして、その国で保護するに値する商標であるか否か、の審査が行われることは、日本国の出願手続きの流れとほぼ同様な流れになります。
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