432 不使用による取消
商標権者が継続して3年以上、登録商標を指定商品に使用していない場合には、特許庁に対して第三者が取消審判を請求して、その商標権が取消される場合があります(商標法第五十条)。
商標の保護は、商標権者が商標を使用することによって、商標に化体する商標権者の信用を保護するものです。ところが、一定期間その商標を使用しないのであれば、信用が化体しないか、又は化体しても使用しなければ信用が消滅し、保護の必要がなくなると考えられるからです。他方、不使用の登録商標に独占排他的な権利を与えておくことは、第三者の商標選択の余地を不当に害していると考えられるからです。このような弊害のある状態を、第三者が審判請求することを待って、審判で商標登録を取消して、是正することができる制度です(特許庁編「工業所有権法逐条解説第18版」抜粋)。
特許庁の審判官の合議による審判は、その審決や決定は行政処分であるので不服があれば、東京高等裁判所に訴えることができます(商標法第六十三条)。特許庁を管轄する東京地方裁判所に訴えるのではなく、いきなり東京高等裁判所に訴えることができるとしたのは、特許庁での審判手続きが、裁判に類似した準司法的手続きによって行われるからです。いたずらに、三審級(地裁から最高裁)を重ねることは、事件解決を遅延し、専門技術的な内容は、特許庁の専門家の審判手続きを尊重できる、とされているからです(特許庁編「工業所有権法逐条解説第18版」抜粋)。
具体的には、審判請求は、審判請求書を特許庁長官に提出することで、請求できます(特許法百三十一条準用)。
審判で、いきなり商標権が取消されることはありません。第三者が、取消すことの審判を請求した場合、商標権者には、審判請求書の副本が送達され、答弁書を提出する機会が与えられます(特許法百三十四条準用)。商標権者が、その登録商標が不使用であることを否認して、使用していることを立証できれば、請求は成立しない旨の審決がされます。そして、その商標権は維持されます。