普通名称のみの商標
条文では、「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(商標法第三条第一項第一号)となっています。
【説明】例えば、商品14類「時計」に商標「時計」を使う場合、役務39類「航空機による輸送」に商標「空輸」を使う場合、誰の業務に係るものか、出所を特定できず、自他を識別することはできません。これらは誰もが使う、普通名称であるからです。
ただし、普通名称を使用していても、「普通に用いられる方法ではない表示」の場合、例えば、特徴ある飾り文字を用いて表示して、識別力を有している場合があります。この場合には、この普通名称のみの商標には該当しません。
普通名称には、その略称や俗称も原則として、普通名称に含まれるものとされます。商品6類「アルミニウム」の普通名称「アルミニウム」には、その略称「アルミ」も含まれます。役務36類「損害保険の引受け」の普通名称「損害保険」には、その略称「損保」も含まれます。役務41類「演芸の興行の企画又は運営」の一部の普通名称「海外の芸能人などと交渉して国内での興行を契約するなどの事業」には、その俗称「呼(び)屋」も含まれます。
更に普通名称をローマ字や仮名で表示するものは、「普通に用いられる方法で表示する」ものに該当するとされます。例えば、商品31類「りんご」の普通名称「林檎(果物)」を、「APPLE」、「アップル」、「りんご」、「リンゴ」、「RINGO」を表示する等は、普通名称を普通に用いられる方法で表示しているものです。
ただし、商品9類「電子計算機」に、商標「APPLE」(商標登録第1758671号など)を使う場合は、普通でない名称
です。強力な識別力を有していることは、ご承知のとおりです。それ自体は普通名称でも、全く別の商品や役務に使用する商標は、普通でない名称ですので、登録を受け得るものです。事業の始めは識別力を有していなくても、営業努力の継続の結果、その商標に信用が化体され、将来は識別力を有する可能性があるからです。