214_9 商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標

 条文では、「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標」(商標法第四条第一項第十六号)となっています。
【説明】特許庁の審査基準は、次のとおりです。
1.「商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれ」とは、その品質又は質がその商品又は役務に現実に存在すると否とを問わず、その商品が有する品質又は役務が有する質として需要者において誤認される可能性がある場合をいう。

2.指定商品又は指定役務との関係上、品質又は質の誤認を生ずるおそれのある商品又は役務に対して拒絶理由の通知をした場合において、品質又は質の誤認を生じない商品又は役務に補正したときは、要旨を変更しない限り、その補正を認めるものとし、要旨を変更するときは、その補正を却下するものとする。

3.国家名・地名等を含む商標であって、それが指定商品又は指定役務との関係上、商品の産地・販売地又は役務の内容の特質若しくは役務の提供の場所を表すものと認識されるものについては、その商標が当該国若しくは当該地以外の国若しくは地で生産・販売される商品について使用されるとき、又は当該国家又は当該地名等によって表される特質を持った内容の役務若しくは当該国・地で提供される役務以外の役務について使用されるときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものとして、本号の規定を適用するものとする

 特に、外国の国家名を含む商標である場合には、その外観構成がまとまりよく一体に表されている場合又は観念上の繋がりがある場合(既成語の一部となっている場合等国家名を認識しないことが明らかな場合を除く。)であっても、原則として、商品の産地・販売地又は役務の内容の特質若しくは役務の提供の場所を表すものと認識されるものとして、本号の規定を適用するものとする。

 ただし、次のように商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせることなく適正に表示されている場合はこの限りでないものとする。
(イ) 被服に係る商品において、商標中に「イギリス」の文字を含み、指定商品が「イギリス製の洋服」の場合
(ロ) 飲食物の提供に係る役務において、商標中に「フランス」の文字を含み、指定役務が「フランス料理の提供」の場合

 なお、商標中に単に付記的に用いられている商品の産地・販売地又は役務の質を表す国家名、地名等の文字は、補正により削除することができるものとする。
 
 ただし、国際商標登録出願に係る商標については、これらの文字等を削除する補正をすることはできない。
(例)該当する例
「SWISSTEX」 指定商品 第14類 時計
<備考> 「SWISS」の文字は「スイス国」を認識させる。

(例)該当しない例
「どどいつ」 指定商品 第11類 浴槽
<備考> 「どどいつ」の文字は「都々逸」を認識させる。

4.商標中に「○○博覧会金牌受領」、「○○大臣賞受領」等商品の品質又は役務の質を保証するような文字、図形等の標章があるときは、その事実の立証を求め、立証されないときは、第4条第1項第9号 を理由として拒絶するものを除き、本号の規定を適用するものとする。

5.商標の付記的部分に「JIS」、「JAS」、「特許」、「実用新案」、「意匠」等の文字又は記号があるときは、これらの文字等が補正により削除されない限り本号の規定を適用するものとする。
 ただし、国際商標登録出願に係る商標については、これらの文字等を削除する補正をすることはできない。

6.地域団体商標は、これが商標中の地域の名称と密接な関連性を有する商品又は役務以外の商品又は役務について使用されるときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせるおそれがあるものとして、本号の規定を適用するものとする。

 ただし、指定商品又は指定役務が、例えば、次のように商品の品質又は役務の質の誤認を生じさせることなく適正に表示されている場合は、この限りでないものとする。
① 地域の名称が当該商品の産地であれば、「○○(地域の名称)産の△△(商品名)」とする。
② 地域の名称が当該役務の提供の場所であれば、「○○(地域の名称)における△△(役務名)」とする。
③ 地域の名称が当該商品の主要な原材料の産地であれば、「○○(地域の名称)産の□□(原材料名)を主要な原材料とする△△(商品名)」とする。
④ 地域の名称が当該商品の製法の由来地であれば、「○○(地域の名称)に由来する製法により生産された△△(商品名)」とする。ただし、例えば、「インドカレー」、「江戸前すし」のように地域との密接な関連性が希薄となり、一般的な製法と認識されるに至っている場合は、除かれる。

 なお、上記は、地域団体商標における指定商品が「○○(地域の名称)に由来する製法により生産された△△(商品名)」と記載されている場合において、需要者がその商品について○○産の商品、又は、主に○○産の□□(原材料名)を用いた商品であるかのように品質を誤認するおそれがあるときに、本号の適用を妨げるものではない。