215_1 他人の肖像又は氏名、著名な雅号、著名な略称などを含む商標

 条文では、「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」(商標法第四条第一項第八号)となっています。
【説明】特許庁の審査基準は、次のとおりです。
1.本号でいう「他人」とは、現存する者とし、また、外国人を含むものとする。
2.自己の氏名等と他人の氏名等が一致するときは、その他人の承諾を要するものとする。
3.本号でいう「著名」の程度の判断については、商品又は役務との関係を考慮するものとする。

「他人の氏名」については、例えば、住所Aの青木功は、商標「青木功」を、指定商品「運道具とそれに類する商品」に使うものとして、出願しましたが、第四条第一項第八号に該当するとして登録を受けることができませんでした。出願人以外の住所Bの青木功やその他の住所の青木功の承諾を得ていないので、他人の承諾を得ていないと認定され、本号に該当するとされました。(昭和52年審判第17348号)
他人の氏名を承諾なしに、商標として登録を受けることができないのは、人格権を保護する目的とされています。

「著名な略称」については、例えば、ある人は、商標「ジャイアンツの江川」を、指定商品「被服、布製身回品」に使うものとして、出願しましたが、第四条第一項第八号に該当するとして登録を受けることができませんでした。過去ジャイアンツに所属した江川卓は学生時代から超一流の野球選手として有名であり、このように著名な江川卓氏を指す略称「江川」を含み、同氏の承諾も得ていないので、本号に該当するとされました。(昭和57年審判第7023号)
法人の場合には、商号 「ABC株式会社」から「株式会社」を除いた部分の「ABC」は、「他人の氏名」ではなく略称に相当します。