224 小売役務の便益提供

 商品を小売する業務において、商標は二つの面で顔を出します。一つは、小売される商品に付された商標として顔を出す場合があります。この場合には、通常、商品の出所を表示するものとして、商品の製造業者や販売元業者が商標権者となってその商品に商標を付しています。

 もう一つは、小売業者が小売業務において行われる総合的サービス(便益の提供)の出所を表示するものとして顔を出す場合があります。平成18年の法改正により、このような場合の商標についても、登録出願をして、保護を受けることができるようになりました。
条文では、「前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。」(商標法第ニ条第ニ項)となっています。
そして、登録出願の願書に記載する役務の区分として、例えば、「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(商標法施行規則別表第三十五類の第十三)や「織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(商標法施行規則別表第三十五類の第十四)が追加され、総合的サービス(便益の提供)に使用する商標も保護を受けることができるようになりました。
 
 具体的には、いわゆるスーパー・マーケットやコンビニエンス・ストアや量販店、小売店などで、店舗名として使用される商標や、ショッピングカート、レジ袋や店舗従業員のユニフォームなどに使用される商標がこれに該当します。
近年の流通産業の発展にともない、店舗販売、通信販売からネット販売と販売形態が多様化したばかりでなく、仕入れの強さ、価格の安さ、逆に商品の高級感、商品の品揃えの多さ・嗜好の合致、店舗内の商品配列の分かり易さ、商品表示の見易さ、従業員の商品知識の高さ、従業員身だしなみの良さ、メンテナンス・サービスの良さ、店舗雰囲気の良さなども多様化し、それぞれの小売業者が特徴のある総合的なサービスをして、消費者の購買意欲を促そうとしています。このような流通産業の発展の実体が、業界の要望として商標法に反映されたといえます。